北浦和公民館 「金子みすゞの詩と思い」

★金子みすゞの詩と思い」 みすゞは、なぜ、現代に蘇ったのか?★
*日 時: 平成24年9月4日(火) 10:00~12:00
*会 場: 北浦和公民館 講座室
*講 師: 女性史研究家 小杉 美智子 先生
童謡詩人・金子みすゞは、昨年の東日本大震災の際のテレビCMで再び注目されるようになりました。
その詩「こだまでしょうか」を印象深く覚えておられる方も多いのではないでしょうか。
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こだまでしょうか
「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。
「ばか」っていうと
「ばか」っていう。
「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
そうして、あとで
さみしくなって、
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、
いいえ、誰でも。
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今回は、8月に「映像で見る『鬼平犯科帳』の魅力」を講演してくださった小杉美智子先生より、「金子みすゞ」について、特に以下の2本の柱を中心に、お話をしていただきました。
・憧れの童謡詩人だった金子みすゞは、なぜ自らの命を絶たねばならなかったのか。
・みすゞは、なぜ現代に蘇ったのか。

【講師の小杉美智子先生】
では、講演の内容を、順を追ってご紹介いたします。
<内 容>
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1.「みすゞ」の詩讃歌
2.みすゞの生涯
3.みすゞとその時代
4.みすゞの詩の魅力
5.みすゞはなぜ現代に蘇ったのか?
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1.「みすゞ」の詩讃歌
金子みすゞを1980年代に発掘した詩人の矢崎節夫氏や、宇宙物理学者の佐治春夫氏など、数多くの著名人がみすゞに対して賛辞を寄せています。
みすゞの詩が、いかに幅広い分野の人々に愛好されているかが良く分かります。
2.みすゞの生涯
みすゞの生涯を記した年譜を見て、小杉先生が詳細な説明を加えてくださいました。
特に、「明治36年4月11日、山口県大津郡仙崎村に生まれる」という部分に関して、この1行から分かることがたくさんあるとのお話をいただきました。
例えば、明治はじめ頃の仙崎村はクジラ漁が盛んで、それによって村が経済的に潤っていたこと、またその一方で、「クジラという哺乳動物を殺生して自分たちは生きているのだ」という意識が当時の村人の間に共有されていたこと、そして、そのために村は宗教に篤かったことなどを語っていただきました。
このような当時の仙崎村の「生と死」に関する背景が、みすゞの作風に大きな影響を与えたようなのです。
そのほか、金子みすゞの生涯には、3歳のときに死去した父親、叔父と再婚した母親、幼いころ養子に出されてしまった仲の良い弟、そして、結婚後も放蕩が止まなかった夫の存在など、複雑な家庭環境が常に影を落としていました。
特に、結婚してからみすゞに対して詩作を禁じた上、離婚後に娘の親権を要求してきたという夫の存在は、みすゞの自殺の原因となるほど重いものでした。
3.みすゞとその時代
この時代、女性が世の中へ出ていくには、それを支える人物の存在が不可欠であったことを、具体例を挙げてお話しいただきました。つまり、良い協力者がいないことには、ひとりの女性が世に出ていくことは厳しい時代だったのです。
そのような中で、みすゞには、なかなか協力者がいませんでした。そのために、死後半世紀にわたって作品が世に埋もれていた、ということもあったのです。
4.みすゞの詩の魅力
小杉先生の朗読で、みすゞの詩を鑑賞しました。
その際に、小杉先生が以下のように、詩を幾つかのカテゴリーに分けてくださいました。
<みすゞの原点>
<少女期の思い、妻としての思い>
<母に寄り添いたい思い>
<自然の営みを見つめるやさしさ>
<みすゞの孤独感>
<弱きものへのいたわり、存在することの尊さ>
<おのれの心の中にある暴力へのおそれ>
このようにして見てみると、一口に「金子みすゞの詩」と言っても、そこには実に様々な側面があるのだな、と言うことが良く分かります。
5.みすゞはなぜ現代に蘇ったのか?
この講演のクライマックスにあたる部分です。
講演タイトルにありますように、金子みすゞは「なぜ、現代に蘇った」のでしょうか?
それには、いくつかの要因があることを、小杉先生はお話くださいました。その内容については、次回講演会のチャンスがあったときに、ぜひ足を運んでお聞きになってみてください。「なるほどなぁ」と思うこと請け合いですよ。
さて、薄幸の生涯を送った金子みすゞについての話は、ともすると内容が暗くなりがちになるかも知れないのですが、小杉先生は時に冗談なども交えながら、解りやすくお話をしてくださいました。
来場された約30名の皆さんも終始、先生のお話にウンウンと頷き、ときには笑いながら、熱心に聞いていました。先生、楽しいお話をどうも有難うございました!
小杉美智子先生は、宝塚を愛する会を主宰されています。
次回は、来たる10月8日(祝日)に別所公民館(さいたま市南区別所5-21-13)にて開催されます。宝塚に関心をお持ちの方や、小杉先生のお話に興味を持たれた方は、ぜひお誘い合わせの上、ご来場ください。
また、北浦和e街では、小杉美智子先生の特集ページを予定しておりますので、どうぞご期待ください。

【小杉先生、たいへん良いお話を有難うございました。】
M.MUKAI